朝の陽気な日差しとは裏腹に、俺の心は朝からどんよりしていた。
何しろ、今日は年に一度の「審判の日」。そう、健康診断だ。
バリウム検査があるため、前日の夜9時以降は飲食禁止。朝食はもちろんコーヒーすら飲めない苛立ちを抱えながら、指定されたクリニックへ。待合室には同じように薄味の表情をした大人たちが並び、名前を呼ばれるのを待っている。このなんとも言えない無機質で静かな空間が、どうにも居心地が悪い。スマホを開いてニュースを眺めても、頭にまったく入ってこない。
そして今回のハイライトは胃部X線検査、通称「バリウム検査」。
あの、石灰を水で溶いたようなドロドロの得体の知れない液体を飲み干すだけでも苦行なのに、胃を膨らませるための発泡剤(炭酸)を飲まされた後の「ゲップを我慢してくださいね」という地獄のミッション。
今回、俺は見事にやらかしてしまった。
検査台の上で、遊園地のアトラクションばりにぐるぐると回され、うつ伏せになり、息を止めさせられ……極限状態の中で、つい「ゲフッ」とやってしまったのだ。
「あー、出ちゃいましたね。じゃあ発泡剤とバリウム追加しますねー」
マイク越しに響く、無慈悲で事務的な技師さんの声。
追加の発泡剤と、さらにドロドロのバリウムが注がれたコップを手渡される。胃の中で暴れ回る炭酸の圧力と闘いながら、再び検査台でアクロバティックなポーズをとらされる俺。気分は最悪。汗
「早く終わってくれー」と願い続け、ようやく検査終了。
バリウムで白く染まった唇を拭いながら、「来年こそは胃カメラにしたい」と思いを馳せた。
今回、一番最後に迎えたのが身体測定。
特にしんどいことはないが・・・体重計に乗ると、昨年からきっちりプラス5kg。
いや、これは予定通りだ。最近は(というかずっと)絶賛増量期として、トレーニングの強度を上げつつ、食事も無理やり摂っていた。自分の求めるガチムチ体型にアップデートできているはずだ。
ところが、問題はその次の腹囲測定。
メジャーを巻いた看護師さんが、手元のカルテと俺の腹を交互に見比べ、無表情で数値を読み上げる。
「プラス5cmですねー」
・・・えっ?
いや、太ったのだから、腹囲も増えるのは当たり前・・・だけど、1kgあたり1cm・・・か。
たしかに、最近ベルトがきつくなったし、お腹が飛び出ているのも実感しているが。
ただ、腹回りだけに集中的に肉がつくのは解せない。
おじさんの出ているお腹は愛おしく感じるのだが、自分が出ているのはなんか許せない。笑
増量中でもお腹を少しでもひっこめるために、かれこれ半年ほど、毎朝プランクを行っている。けっこうキツイ。悲しい。俺の頑張りを無駄にしないでくれ。。。

クリニックに到着して約1時間半、ようやく健康診断が終了。
採血の注射跡をさすりながらクリニックを出て、カフェで遅めの朝食を摂る。
正直なところ、健康診断なんて行くまでは面倒くさいし、もし何か悪い結果が出たらどうしようと怖い気もする。バリウムは不味いし、注射は痛いし、ロクなことがない。
でも、この年になったら毎年絶対に受けるべきだと思うのだ。
特に俺のように、気ままな独身生活を謳歌している身としては、自分の健康管理は自分でやるしかない。もし何か致命的な病があったとき、「あと半年早く見つかっていれば」なんて後悔だけは絶対にしたくない。いつまでも健康で若々しいイケオジでありたい。
あいにく増えてしまった腹囲は、美味い酒と食事を楽しんだ、豊かで人間味あふれる人生の年輪ということにしておこう。とはいえ、このまま放置するのもよろしくない。明日の朝から、プランクの時間を泣きの1分追加してやろうか?
さて、そろそろバリウムの下剤も激しく自己主張を始めてきた。お腹がグルグル不穏な音を立てている。今日は大人しく家で白湯でも飲んで、胃腸を労わりながら早めに寝ることにしよう。


